支援事例
「2名で入る理由を、文書にする」
事例06/気管切開・人工呼吸器/30代/横浜市
ご本人・ご家族の同意を得たうえで、個人が特定されない範囲で内容を編集しています。
夜間、人工呼吸器を使用している方の支援に2名で入ると言うと、「多いのではないか」と言われることがあります。人手の問題に見えるからです。わたしたちは、これを人手ではなく設計の問題として扱っています。
なぜ2名か
体位交換、更衣、おむつ交換。体を動かす動作そのものが、気管カニューレの抜けや閉塞を起こす最大のリスクです。動かす人は手が塞がり、その間の表情や呼吸、SpO₂の変化を見続けることができません。だから、動かす人とは別に、顔と数値を見続ける人が要ります。
異常が起きたときも同じです。SpO₂が下がれば、1名が吸引と酸素を行い、もう1名が数値を読み上げてご家族に連絡する。1名では、どちらかが後回しになります。
手順書をつくる
この方の支援を始めるにあたり、ご家族と訪問看護に協議いただき、手順書を作成しました。内容は三つに分けています。
一つ目は「わたしたちが守ること」。必ず2名で行う、体を動かす前後にカニューレを目視で確認する、異常値を機器の誤作動と決めつけない、迷ったら自己判断しない。この6項目を、手順書の最初のページに置いています。
二つ目は「2名が必要な理由」と「異常時の役割分担」。SpO₂低下、呼吸器アラーム、回路外れ。場面ごとに1名目と2名目が何をするかを表にしています。急変時の医療的な判断は訪問看護が作成したフローチャートに従い、わたしたちの手順書はそのときの二人の動きだけを決めています。
三つ目は、時刻ごとのタイムライン。入室から退室まで、何時に何をするかを固定し、実施のたびにチェックを入れます。
日々変わることと、変えないこと
手順書で固定しなかったのは、その日の体調によって変わる項目だけです。排痰補助の回数、水分の量、更衣の要否。これらは入室時にご家族に確認する欄を設け、それ以外の手順は変えません。ご家族が毎回説明し直す範囲を、この欄だけに絞りました。
手順が文書になっていると、担当が代わっても同じ支援に入れます。新しく入るスタッフは、先輩と同行する前に手順書を読み、現場で「なぜそうするか」を確認します。介護の経験がない人でも、迷ったときに戻る場所があります。
相談員の方へ
2名体制の根拠は、口頭ではなく文書でお示しできます。支給量の申請や変更の際には、必要時間の根拠となるタイムスケジュールを作成してお渡しします。「多いのではないか」という問いには、何をしているかで答えます。